おもいだしたくない

SNSには書かない

なんとかしないといけない①

その朝僕は困惑していた。東京郊外の2LDK のマンション。ダブルベッドがドカンと置かれた寝室の床にはワインの空き瓶が3本転がり、その横にはミニアンプに繋がったままの電池駆動式のアナログシンセが、秋の蚊のような絶命寸前のか細い震えた声を鳴らして、今まさに力尽きた。足元にはエビフォンのセミアコがうつ伏せに寝転がっており、そのボディを白い足が撫でていた。頭が痛い。喉が渇く。最近歳のせいか心臓の痛みすら感じる。メガネを取ろうとして手を伸ばしたら違和感を感じる。メガネに精液が付着していた。隣の女子は上半身は裸だが、パンツはかろうじて履いているようだ。歯を磨いていないのだろう。口臭がひどい。精液がついてたメガネは彼女のものだった。とりあえず女子のパンツを脱がして、中出ししていないか確かめることにした。はいごめんねー、いいこいいこねー、と呟きながらパンツを下ろして、少し股を開かせる。うーん、という声はしたが、抵抗はなかった。股の間に精液がついてない方の手を滑らせると案の定濡れていた。いや、そういうんじゃなくて。でもサービス精神で少し股間を撫でると湿り気が増してきた。本題に戻ると精液はついてなかった。中出しはしないでメガネにかけるだけで我慢したのを褒めてあげたい。

彼女のスマホはどこだ。多分、絶対、間違いなく、彼女と僕は酒を飲み、セッションし、裸になり、セッションをし、サックスをし、セッションをし、メガネに精液をかけて寝たのだと思う。その様子は全て彼女のスマホに記録されてるに違いない。